達人・尾崎亜美

テニスに出かける前に「いつみても波瀾万丈」を見ていたら、ゲストが尾崎亜美でした。
半生記の中身はさておき、スタジオで展開される音楽の達人ぶりは痛快でした。
トイピアノで中学生時代に作った曲を弾き語りする場面がありましたが、「衣中音頭」なんていうのにもちゃんとブロックコードの伴奏がつくのです。やっぱり幼い頃にちゃんと訓練されてる人はうらやましい。おそらく、あの伴奏は後から付けたのではなくて、作曲したときにもうあのコードが付いていたんでしょうね。


尾崎亜美ユーミンとは違う意味でフォーク・ロック界の新世代の人でした。
つまり作曲する段階で曲の最終型を思い描いて作っていく、メロディと編曲を同時進行で作る、というやり方を最初から身につけていた人だったのです。
これは当時の、ギターコードを6つくらいしか知らない素人はだしのシンガー・ソングライターには無いスキルでした。曲を作ること自体が特別な才能だと思われていた当時、尾崎亜美は作詞・作曲・編曲・歌唱を一人でやっちゃう天才でした。
少し後に、山下達郎サウンドプロデュースとコーラス全部も一人でやっちゃうという、いかにもひとりっ子的な形でマルチな才能を評価されますが、とにかくこの二人は同業者にも一目置かれる突出した才能として、セールス以上に評価されていたんです。
実際、「マイ・ピュア・レディ」は当時子どもだった私にはオシャレすぎて難しかった。後に南沙織に提供した「春の予感」くらいでちょうど良かった感じです。


さて、そんな尾崎亜美は(今日の番組によると)デビューしてしばらくしてから休業期間をとったのだそうで、その理由を「ヒットを出すぞとぎらぎらした人たちの中でやるのがしんどかった。私はテクニックだけで曲を作ることはしたくなかった」と語っていました。カッコイイ!アーティストたるもの、この矜恃が無くちゃいけません。しかも天然系の人が言うと負け惜しみになりますが、あのピアノ、あの音感の持ち主が言うからカッコイイんです。


いつでもどこでもいつもまでも、一定レベルの作品を生み出せる職人芸も、そりゃたいしたもんですが、私は自分の心身を切り刻むように作品を作るタイプの人の方が好きですね。
最後にやった短縮版(1ハーフの)「オリビアを聴きながら」の弾き語りも美味しゅうございました。

Twin Best

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