フード・インク
めずらしく映画館で映画を見てきました。
単館上映のドキュメンタリー映画「フード・インク」です。直訳すると「食品会社?」
→ http://www.cinemacafe.net/official/foodinc/
アメリカの農業が、あるいは独占資本による畜産が、どのように行われているかを批判的に取材したドキュメンタリーです。
私はかねてから、ファーストフードで(最近はファストフードと書くらしいがその理由はよく分からない。firstはファーストでfastはファストと書くのになんか合理的理由がありますか?だったら「ベートーヴェンのシムフォニィ」であり、「バスのエンジンはヂーゼル」で、名古屋駅前の大きい建物はやはり「ビルヂング」でしょう?)コーヒーをかけられただけで億単位の裁判を起こすアメリカ人が、なぜ自分たちが口にする食品の遺伝子組み換えや狂牛病に対してこんなに寛容なのか、とても不思議に思っていました。その理由が分かるかもしれないと思って、宮益坂のシアター・イメージフォーラムまで行ってきました。→ imageforum.co.jp
こんな映画を見に来るのは偏屈な中年だろう(自己紹介乙w)と思って行きましたが、行ってみると平均年令30歳前後の比較的若い人が多く、小さいながら客席もほぼ埋まっていました。
さて、このドキュメンタリーが暴くアメリカの食品の問題は、
- 買い手となる大手畜肉業者と一度契約すると、「品質保持のため」に次々と設備投資を強いられ、自転車操業に追い込まれる養鶏農家。しかもその薄暗い密閉された鶏舎の中には、自分の体を支えることも出来ないほど急激に太らされた鶏
- 元来、草を食べていれば良い牛に大量にトウモロコシを与えることで、牛の体内の大腸菌が進化してO-157になり、食べた人間が健康被害を被る(そして死ぬ場合も)バカバカしさ
- 遺伝子組み換え大豆を栽培し、その花粉によって遺伝子レベルで汚染された畑の持ち主を「知的財産権の侵害だ」と訴える種苗メーカー(しかも本業は農薬メーカー)の傲慢さ。しかも正義がどちらにあるかより前に、膨れ上がる裁判費用に耐え切れず泣く泣く和解に応じる農家の気の毒さ
- (米)国の補助により、適正価格以上に安い価格で供給されるトウモロコシは、通常の食用だけでなく、家畜の飼料になり、甘味料になり、食品添加物になり、今私達が口にする食品をさかのぼるとすべてアメリカのコーン畑に行き着く、という不気味さ(アメリカの映画なんで日本の食べ物のことは語られないが、今の日本の家畜飼料や食品原材料の由来を考えれば大差なかろう)。
- しかも国の補助による価格競争力によって、近隣のメキシコのトウモロコシ農家は農業を続けることができず、そこで生み出された貧困層が不法移民としてアメリカの食品会社の安価な労働力になる、という「不条理」
- そして低賃金労働者にとってもっともカロリー当たり単価が安い食べ物がファーストフードだ、ということ
- 風評被害法(一部の州法)によって、大企業に対して自由な批判ができない。事実上の言論統制が行われていること
- アメリカ農務省の上層部に大手食品会社OBが多く存在し、本来、指導管理するべき行政が大企業にコントロールされていること
等々…
日本では相変わらず自給率が40%だ、というと「カロリーベースで自給率を計算してるのは日本だけだ」とか「金さえあれば食料は手に入る」と言ってる有識者がおおぜいいますが、とにかく食べ物についてはすでに飼料や原材料レベルでアメリカの独占資本に支配されていることは否定できません。その不気味さ、不自由さを我々はもっと怒っていいはず。実際に飼料や原料のレベルではもう、遺伝子組み換えされたコーンや大豆を避けることは非常に難しくなってしまっています。
こういう問題を言い出すと「嫌なら買うな」という声が出てくると思いますが、そうです、「嫌だから買わない」という選択こそが、私たちにできることです。自由主義の世界では「消費する・しない」による「買い手の選択」こそが正義。お客様は神様です。
この映画では最後に、「システムを変えられるチャンスが1日に3回ある」として、次のような消費行動を提起しています。