刑事コロンボ・DVDコレクション

そういえば、自分でもバカみたいだと思いながら、デアゴスティーニの「刑事コロンボ・DVDコレクション」シリーズをちまちま買い続けています。
10月から販売が始まって、

  1. 殺人処方箋
  2. 死者の身代金
  3. 構想の死角
  4. 指輪の爪あと
  5. ホリスター将軍のコレクション

まで発売中。次回は12月18日に「二枚のドガの絵」が発売になるとのこと。


刑事コロンボ」は私が小学生の頃にNHKで放送が始まり、いつのまにか熱心に見るようになりました。当時のテレビでは、刑事の出てくるドラマというと「太陽にほえろ!」みたいな走る、殴る、鉄砲撃つのアクションものか、「夜明けの刑事」みたいな人情ものが主流だったので、「アメリカにはこんな本格推理小説みたいなドラマがあるんだ」と子ども心に感心しながら見ていたものです(ちょうど江戸川乱歩の「少年探偵シリーズ」を読み終わった頃だった)。
細かいことを言えば「刑事コロンボ」は本格派ミステリではなく、最初に犯人が分かった上で、その一見完全に見える殺人トリックが風采の上がらないコロンボ警部によって暴かれて行くのを楽しむ、倒叙形式ミステリです。古くは江戸川乱歩の「心理試験」などのやり方であり、新しいところでは刑事コロンボを強く意識してる「古畑任三郎」がそのフォーマットを忠実に踏襲しています。一般に文学としては人間が書けない(犯人の心理が書けないから)ジャンルと(悪口を)言われるミステリですが、倒叙形式は犯人が最初に提示されるので、文学性の高い心理描写が可能であるとも言われています(その元祖は「罪と罰」であるとも…)。


普通のミステリが、最後に全貌を現す犯人とその犯罪トリックを知って「そうか」と膝を打つものであるのに対し、「刑事コロンボ」は「そこでミスがあったのか!」と犯人と一緒に驚く、というのが楽しみの中心です。その結末には人によって好みがあると思うのですが、うろ覚えの記憶を辿って私が好きなコロンボ・シリーズの作品を挙げるとおよそ次の通り。尻尾を出さない犯人に対してコロンボ自身が罠をはって犯人を嵌めちゃうパターンと、周到な計画の中の盲点から生まれる小さい矛盾を見つけて論理だけで解決するパターンが、私は好きです。

  1. 二枚のドガの絵
    • これは名作。倒叙ものを書く人は絶対真似したがると思うなあ。それにしても、現実の裁判でこれはちゃんと証拠として採用してもらえるんでしょうか?
  2. 別れのワイン
    • この犯人はすごく気の毒。殺人をしてまで守りたかったものが予期せぬ自然現象の為に…。
  3. 意識の下の映像
    • サブリミナル広告の理論(当時最先端の心理学だったのかも?)を使った殺人犯への、コロンボの強烈な意趣返しが見事。
  4. 歌声の消えた海
    • 科学捜査のできない洋上の客船内で、コロンボが自ら鉛筆の粉で指紋を採取するなどの前時代的な手法だけで、ちゃんと決め手となる物証を手に入れるところがシャレている。
  5. 仮面の男
    • 犯人のアリバイを徐々に崩して行って、最後に決定的なミスを指摘するところが痛快。

実はデアゴスティーニでちまちま買うよりも下の商品を買った方が早いし合計の出費も少なくて済むんだが、月に2冊、3000円の出費だからこそ買う気になるのも確かで、薄っぺらとはいえ解説本も欲しいから私はしばらく買い続けてみます。