温暖化問題いろいろ

「お前が騙されてんだよ」さんからのサジェッションもあって、このところ地球温暖化にまつわる本を買い込んで読んでいました。


ところが、今、本屋さんの店頭を見ると温暖化を真面目に論じている本は驚くほど少なく、勢いがあるのは「地球温暖化はウソ」「CO2削減は無意味」という意味合いのタイトルの本がほとんどです。「不都合な真実」などのメディア的にど真ん中だったもの以外、特に新刊書や新書のコーナーには温暖化肯定派と思われる著書がほとんどないのです。旗色悪いのか肯定派?


というわけであまり選択肢のない中から、公正を期すために両陣営の代表として「環境問題のウソ(池田清彦)」「環境問題のウソのウソ(山本弘)」「手にとるように地球温暖化がわかる本(村沢義久)」の3冊を読んでみました。
私は武田邦彦にまるごと騙されたわけではないが、「偽善エコロジー」がある程度科学的根拠をもとに書いてあるんだと思ったし、それなりに論理的な展開がされていると思ったので、ふんふんそういうこともあるかな?でも自分でデータに当たらないと分からないよなと思ったところで前回のエントリを書きました。


「偽善エコロジー」を読み終わった時点での私の気持ちとしては、
1.地球は温暖化しているのか?
よく分からない。ヒートアイランドは間違いなく起きてると思うけど。
2.温暖化しているとして、それは人為的なものか?
1が曖昧なので、もっと分からない。
3.レジ袋や割り箸は環境に負荷を与えないのか
与えてないと言われればそうかもしれない。割り箸を作るために木を切る林業はないんじゃないか?
4.ダイオキシンは心配することはない
本当かな?確かにダイオキシンで人が死んだという話は聞いてない。
5.家電リサイクルは消費者からリサイクル料を徴収しておいて実は横流ししているらしい。
本当だったら腹が立つよな。


しかも巧妙なのかお人好しなのか知りませんが、著者の武田邦彦さんは、温暖化とCO2の因果関係についてはある程度前提として認めているようなんですね。立場として、一部企業や業界の片棒を担いでいる感じもしないし。どちらかというと勉強好きの気の好いおっさん的キャラクターの人なんじゃないかと思ったのです。妙に詳しい話をしていたかと思うと、突然素朴な小学生向けみたいなたとえ話を展開したりして…。あと時々、「日本は海外から大量の食糧を輸入して多くを廃棄している。国内で生産した食糧を大事に食べるのが大切」とか「愛用品を持ち、ものはこわれるまで使おう」とか、良い事も言っているんです。


同じく「ウソ派」の池田清彦氏「環境問題のウソ」は、とにかく勇ましい。

環境問題のウソ (ちくまプリマー新書)

環境問題のウソ (ちくまプリマー新書)

ダイオキシンで死んだ奴はいない、環境問題をエサに私腹を肥す奴がたくさんいる、と武田邦彦氏と同様の論調で進みつつ、後半は生物の外来種問題と自然保護のあり方で独自の論説(外来種を排除するのに公的資金を投入することは税金の無駄であり、外来種でもそこに適応したのなら、その存在は許されたのだ。など)を語ります。この手の考え方はアメリカあたりの科学者に多い、「人間は思いついたことは何をやってもよく、それが成功すれば神が祝福したのだ」という考え方と同じで、そうかなとも思うが唯我独尊になりがちです。挙句の果てに「前半は専門外なので…」とあとがきまで読んでから、変な打ち明け話を読まされます。
武田邦彦氏がちょっととぼけた気の好いおじさんという印象なのに対して池田さんはもう少し頑迷で、あまり会いたくないタイプです。


次に「お前が騙されてだよ」さんからのリンク情報から山本弘氏の「環境問題のウソのウソ」を読みました。

“環境問題のウソ”のウソ

“環境問題のウソ”のウソ

山本弘氏のことはあまりよく知りませんが、「と学会会長でSF作家」として、BSマンガ夜話の「ブルーシティ」の回に出ていたのを見たことがあります。そこでは、プランクトンの集合体である「海魔・コノドント」にあたかも意志があるかのようなナレーションを付ける星野之宣の手法を「一人称的三人称」とわけの分からないことを言っていた(つまり、擬人法という言葉を知らなかった)、作家とはいえ意外と庶民的な知性をお持ちな人と思っています。

そんな彼の武田邦彦氏の著作に対するアプローチはとても好感が持てました。
つまり、私が「偽善エコロジー」を読んで「ここは確かめないとな」と思ったことについて、きちんとインターネットや文献など、一次データに当たって確認をしているのです。しかも、出典(インターネットであれば参照リンク)がきちんと書いてある。偉い。科学的っていうのはそういうことです。私も、「これで本を書こう」という見通しと情熱があれば、やったかもしれませんが、実際はそこまでの根気と時間がありませんでした。とても参考になりました。それに、この手のオフィシャルなデータというのは公表はされているものの、人に見せよう、見てもらおうという姿勢が感じられないものが多いんです。やたら重たいPDFになっていて、開けるまで自分が欲しいデータだったのか分からないとか、意外と分類に合理性がなかったり…。

余談ですが、私は時々、お客さんから「『ある農産物』の国内自給率は何%ですか?」みたいな質問をされて「ちょっと調べてみます」と言ったものの、実はそのものズバリの資料なんてどこにもなくて、結局農水省のホームページから各県の生産高を入手し、財務省の貿易統計を入手し、どっちもPDFやどどでかい表計算ファイル(容量はともかく、表がでかい&膨大なデータの中に紛れている)だからプリンタで打ち出して、それを手入力でエクセルの表にまとめて「多くて8%、でも実際の加工現場では濃縮原料が使用されていることを考えると6%以上ということは無いと思いますよ」みたいな報告をメールしたりしています。とりあえず、すぐにブラウズ可能な形で表示し、必要のある人にはCSVファイルかPDFでお持ち帰りいただく、という姿勢になりませんかねえ。余談終わり!

だから、今の「環境問題はウソばっかり」という論調の本ばかりが目立つ書店の中で、ついつい新書ばっかり買っちゃうお金と知性に貧しい我々にもきちんと順序だてて説明する必要があるはずなのに、なかなかそういうものに出会えません。今、環境問題について語るとすると「そんなものはウソ」または「このままでは人類が滅亡する系アオリ」の2種類しかなく、何をもってその結論に至ったのかを冷静に解説する本というのが非常に少ない。行き着く先が「科学的であろうとする姿勢をもった素人」である山本氏の本だった、というのは辛い。


そんな中で、アオリでもウソ呼ばわりでもない、比較的冷静さと公平さを感じさせるのが村沢義久「手にとるように地球温暖化がわかる本」です。

手にとるように地球温暖化がわかる本

手にとるように地球温暖化がわかる本

実はこの本だけを読むと、最近のデータと温暖化削減の技術を紹介しているだけの解説書として読めるのですが、この人はポッドキャスティングも配信していて、そこでは自分の肉声で主張を述べています。
http://www.castalia.jp/podcast.php?pid=1407
村沢義久 - ムラサワ・レター/TALKSHOW
村沢氏はある程度「ウソ派」の論議にも一定目を通し、「部分的には合っているところもある」と認めた上で、「やはり地球は温暖化しているし、CO2は削減されるべきだ」という立場であると明言しています。そしてこれまでも人類がそうして歩んできたように、「科学技術の発展によって温暖化を克服したい」と考えているようです。その核となるのが「燃やさない文明」という提言。管理が困難な個別の企業・家庭で使用するエネルギーは極力電化し、自動車も内燃機関から電気モーターへ、発電所で発生するCO2は一括処理する。将来は発電そのものを太陽光と風力発電に…という流れを思い描いているようです。
村沢氏は純粋な学者タイプではなく、ビジネス社会での経験も豊富だそうで、いろんな意味でバランスがとれており、信用できる感じです。ただ、こういう人が本気で人を騙しにかかったているとしたら、もともと優秀な人なので手強いでしょうね。


さて、いろいろ読み比べてみましたが、結局のところどうなんでしょう?
私の疑問はどうなったんでしょうね?
1.温暖化は起きているのか?
よく分からない。気象という非常に複雑なものをズバリこうだという結論はなかなか出せないだろう。気候の変化は肌で感じるから、なにかが起きている気はする。
2.その変化は人間の活動から来ているのか?
1と同様によく分からない。0ということはないわな。それが20%なのか50%なのか80%なのか、計算ができるのかも分からない。
3.割り箸やレジ袋は環境を破壊しているのか?
これも分からない。林業や植物学の資料を当たる必要があるが、おそらくその中でも議論は対立していそう。
4.ダイオキシンは心配しなくても良いのか?
これもよく分からない。温暖化問題とは切り離した方が良さそうだが、なんで一緒に書いてあったのか?
5.家電リサイクルはちゃんと機能しているのか?
これもよく分からないが基本的に4と同様、別に論考した方が良さそうだ。


今日のところはここまで!