しゅうかんぶんしゅん6がつ4にちごうをよんで
飽きたし書かないつもりだったんですが、ついつい共通の体験をしてしまったので、もう一度書きます。ライター今井舞さんの話。
今日発売の週刊文春6月4日号で木村拓哉主演の新ドラマ「MR.BRAIN」の感想文を彼女(本当に女性なのかも知らないが)が2ページ書いています。その前も春の新ドラマに関してちょっと前に書いていたけれど、私はほとんど連続ドラマを見ないので、検証も出来ないので黙っていました。この1年間ずっとそうです。ただ、先週の土曜日はたまたま仕事から帰ったらこの番組が始まる直前で、つい100分スペシャルを見てしまいました。久しぶりに共通の話題(?)ができてしまったので、答え合わせをしてみました。
「MR.BRAIN」は豪華なドラマでした。名称はよく知りませんが科学捜査ラボラトリーのセットとか機材とかもそうですし、何より出演者の顔ぶれがすごい。木村拓哉の他に綾瀬はるか、水嶋ヒロという民放や映画で今が旬の人気者を中心にして、さらに市川海老蔵、大地真央、香川照之とNHK大河ドラマの主役級(宮本武蔵、お市の方、豊臣秀吉)という豪華な外壁が取り囲んでいます。万が一こけた時に「木村拓哉はもうだめだ」と言わせないために、「これだけの布陣でだめなら企画と脚本の問題です。テレビ局側が責任を取りますよ」ということでしょう。
内容はフジテレビ「HERO」の焼き直しです。主人公の役名の珍しさ加減とその語感。ちょっと変なヤツというキャラの立て方。刑事ではないが事件には絡めるという職業の選択。変わった経歴の主人公を見守る上司の存在など…。また、その構造も基本は1話完結ミステリ形式で1週見逃しても翌週から参加できる間口の広さを確保しつつ、市川海老蔵演じるなにやら怪しげな刑事の存在は物語後半でその暗黒面が主人公を巻き込む「ケイゾク」のアサクラ的存在として準備されている気配があります(とはいえ、きっと本当の悪役ではないのでしょうが)。その他にも広末涼子は本筋に絡むのか?数字が悪ければテコ入れで犯人役ゲストに明石家さんま、田村正和か?とにかくいろんな準備がしてありますね。
さて、そんな「MR.BRAIN」を今井舞さんはどう書いているかというと、
- 開始時期をずらした上に事前の番組宣伝が過剰で辟易とした
- もう中年なのに木村拓哉をいつまで重用するのか
- 脳科学を前面に出している割に脳科学ネタが浅い
- 水嶋ヒロは若い頃の森進一に似ている
- 海老蔵の顔の演技は片岡鶴太郎に似ている
- キムタク神話を続けるために莫大な経費を投じ続けるのは自殺行為だ
- 実体の伴わない大物と化した木村拓哉は将来大橋巨泉になる
プロの文章を読む時に期待することはいくつかあって、例えば
- 文句無しに楽しい、笑える、泣ける
- 新しい視点を与えてくれる
- 新しい知識を与えてくれる
あたりだと思うのだけれど、彼女の文章を読んでそう感じたことはありません。かといって読むのも嫌というほどでもないし、全くつまらないわけでもない。卑近なことについて書かれた文章はなにより気楽に読めるし時間つぶしにはなります。
例えば「いきものがかり」というバンドだかユニットだかがいますね。あの人たちの歌も別に悪くはない。バンド名のセンスも含め、20年くらい前に、プリンセス・プリンセスあたりと同時期に流行っていたらCD1枚くらい買ったかもしれない。だけどそれを平成も20年を過ぎた今、80年代音楽のパロディというわけでもなく、普通に良い歌、良い曲として流通させる意味がオジサンには全くわかりません。
今井舞さんの文章もそんな感じがします。
木村拓哉が無条件でカッコいいわけでないということはナンシー関が生前に指摘しており、特に文春が媒体ならタブーでもありません。
また、相変わらず批評に当たっての比喩や引き合いに出すものの例の選択に切れがありません。海老蔵の表情の演技はお家芸の「にらみ」で鍛えた、目玉の位置までコントロールする技術をテレビドラマの画面に持ち込んだ例として褒めるなりくさすなりすればよいのであって、一般人にとってはるか記憶の彼方にある片岡鶴太郎など引き合いに出す必要はないように思われます(キムタク=大橋巨泉はもっと遠いしね。その文脈ならいっそ石原裕次郎と言ってしまえば意味が通ったのでは?)。
今回画期的なことに彼女は水嶋ヒロと森進一の類似性を語る上で森茉莉(の「ドッキリチャンネル」でしょう)を引用しています。
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次は中野翠あたりを使うか?中野翠は生きているし怒らせると怖いけど。