宇多田ヒカル"Passion"の目指すものを勝手に想像する

宇多田ヒカルの"Passion"のCDが、予約していたアマゾンから届きました。夜、8時半くらいに家に着いたら不在通知があったので、まさかと思いながらドライバーさんの電話を呼び出したら、「ちょっと遅くなりますけど」と言いながら、さっき届けてくれました。日通の下請けも大変だ。

さて、本題です。この曲のいちばんの特徴は「カラオケで歌いにくい」ってことですかね。バックの演奏とボーカルのとってるリズムが違う。カラオケで歌おうと思ったら、頭の中に完璧に取り込むか、譜面にして何拍目から出て何拍伸ばすってちゃんと理解しないと、メロディがどこかにコースアウトしてしまいます。ただしボーッと聴くには面白いし、歌のメロディもシンプルで聴きづらい所は別にないんですけどね。どうかすると、昔の遊佐未森に似ているようにも聴こえます。

それにしても、このCDの売れないご時世にこういう一種の実験作を出してこれるのは、過去の実績というか、持つ者の強みというか、いろんなことがあるんでしょうが、私はやっぱり宇多田ヒカルの音楽に対する真面目さというのをいちばん感じます。同じことを何度もやりたくない人なんでしょう。

彼女に限らず、心ある作り手が自ら才能を賭けて「あえて世に問う実験作」なんかを3回に1回くらいは発表し続けてほしいのですが、悲しいかなそんな余裕(経営的にも能力的にも)のある人はめったにいないみたいで、今日も街には①バラードで、②ベース下降ラインが印象的で、③メロディの一部や伴奏が「オネスティ」か「ワンモアナイト」か「素直になれなくて」のどれかに似ている曲が「今年のいい歌」としてだらだらと流れています。

でも、このカラオケで歌いにくい歌が例えば50万枚くらいとか売れたら、日本の音楽業界にも風穴が空くんじゃないでしょうか?
で、宇多田ヒカル本人は、この曲でこれから自分が作る音楽を聴いてくれる客を育てるぞ、と考えているんじゃないかと思うのです。
相変わらずおっさんに深読みさせてくれてうれしいです(コロンコロン転がされています)。

Passion(DVD付)

Passion(DVD付)