王さん、おつかれさまでした

一昨日の楽天戦で王監督勇退しました。
結局、最下位争いになった1戦も延長12回までやった挙句にサヨナラ負けで終了。ああ、最後まで無駄に華やかな演出とは無縁な人だったなあ。

私は無責任な素人なので、信頼と実績の王さんよりも、おいしいところをぱっと持って行く長嶋さんの方が好きだったし、もっと好きだったのが江川です。野球の神様がいるとしたら、長嶋さんは相思相愛。江川は神様には愛されているのに、本人にその愛を受け入れる気が無い。王さんは自分しか信じていなくて、神様に頼る気もないし、神様も特に贔屓はしてくれてない、という感じがします。


王さんはまた、今の日本には珍しい頑固親父でもあります。
江川が例の騒動をくぐり抜けて巨人入りが決まったとき、「キャンプで同室になるのは嫌だ」と言いました。「落ち着いて練習が出来ない」という純粋な理由なんだと思いますが、当時、四面楚歌だった江川にとっては辛いコメントだったと思うし、江川ファンから見ると何か偏狭なイメージを持ちました。実績の人だから、公式な場で中途半端に空気を読んだりしないのです。
結局、江川は王さんが監督をしている時に引退しましたが、江川は勝手に進退を決め、王さんもまったく引き止めない、という寒々しいやり取りを憶えています。お互いに「あいつとは合わない」と思ってるのでしょう。


引退といえば、王さんはこれほどの選手なのに現役最後の公式戦が引退試合になりませんでした。その最終戦にはチームのAクラスと長嶋監督のクビがかかっていましたから(挙句の果てにそのゲームには勝ったものの、長嶋監督はクビになったのですが)、王さんは自分の引退についてシーズン中に表明できずにいたのです。
結局、王さんの引退は長嶋解任騒動の中の1エピソードとして消費されてしまいました。
ただ、その際に会見で口にした「口はばったい言い方だが、王貞治としてのバッティングができなくなったから」というのは、前人未踏の実績を持つ、彼にしか言えないカッコイイ台詞でした。


それにしても、一昨日の最終戦の幕切れもそうですが、ここでもう一つ偶然が重なったら格好良くなるのに…という場面が、一番地味な形で終わってしまう、というのは本当、持っている運というか、残念です。
改めて考えてみると、ホームランを868本って毎年40本ずつ打っても22年かかるんです。(人工芝のせいか)30過ぎると故障持ちになってしまう今のプロ野球選手で、そんな可能性がある人がいますか?でも、ご本人がそのことを雄弁に語る訳でもなく、偶然のドラマによる演出もなく、淡々とものすごい実績だけが積み重なっています。
私たち見る側が、それをもっと拾い上げて賞賛するべき人ですよね。おつかれさまでした。